保護者の皆様へ
この度、教員の働き方改革について、皆様のご理解とご支援を賜りたく、お便りを作成いたしました。学校は、子どもたちが日々成長し、多くのことを学ぶ大切な場所です。その学校を支える教員が、より良い環境で、より充実した教育活動に取り組めるよう、働き方改革は喫緊の課題となっています。
現在、教員は授業準備、部活動指導、家庭への連絡、各種会議、事務作業など多岐にわたる業務に追われ、長時間労働が常態化しています。文部科学省の調査(2022年度)では、小学校教員の約7割、中学校教員の約9割が、国が定める「過労死ライン」とされる月80時間以上の時間外勤務をしているという結果が出ています。これは、教員の心身の健康を損なうだけでなく、結果として子どもたちと向き合う時間の減少や、授業準備の質の低下にも繋がりかねません。
教員の働き方改革の最大の狙いは、教員が心身ともに健康な状態で、子どもたち一人ひとりと丁寧に向き合い、質の高い教育を提供できる環境を整えることにあります。具体的には、以下の3つの柱で取り組んでいます。
教員が子どもと向き合う時間の確保: 授業準備や教材研究、子どもたちとの対話に時間を割けるようにします。
教員の専門性の向上: 研修や自己研鑽の時間を確保し、より質の高い授業実践や生徒指導につなげます。
教員の心身の健康維持: 長時間労働を是正し、ワークライフバランスを確保することで、教員が活き活きと働けるようにします。
本校では、上記3つの狙いを実現するため、以下の具体的な取り組みを進めてまいります。
● 業務の効率化と見直し:
○ ICT(情報通信技術)の積極的な活用: デジタル連絡網やオンライン会議システムなどを活用し、紙媒体でのやり取りを減らし、事務作業の効率化を図ります。
○ 会議時間の短縮と回数の見直し: 目的を明確にし、必要な情報共有に絞った効率的な会議運営を行います。
○ 定型業務の見直し: 教員でなくても可能な業務(印刷、資料作成補助など)は、可能な範囲で外部人材や事務職員との連携を強化します。
● 教員の専門性向上への支援:
○ 研修時間の確保と内容の充実: 最新の教育理論や指導法に関する研修機会を増やし、教員が専門性を高める時間を確保します。
○ 授業準備時間の確保: 各教員が質の高い授業を行うための準備時間を十分に確保できるよう、校内での分担や協力体制を強化します。
● 組織的な学校運営の推進:
○ チーム学校としての体制強化: 教員だけでなく、事務職員、学校支援員、地域の方々など、多様な専門性を持つ人材が連携し、学校全体で子どもたちを支える体制を構築します。
○ 休憩時間の確保と定時退勤の奨励: 教員が心身を休める時間を確保できるよう、休憩時間の取得を徹底し、定時退勤を奨励します。
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「働き方改革」がもたらすウェルビーイングと子どもたちの成長
教員の働き方が改善されることは、教員自身の**ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)**を高めるだけでなく、子どもたちにとっても大きな恩恵をもたらします。
教員が心身ともに健康で充実していれば、子どもたち一人ひとりに寄り添い、丁寧な指導を行うことができます。これは、子どもたちが「自分は大切にされている」と感じ、自己肯定感を高めることに繋がります。また、心に余裕を持った教員は、子どもたちの個性を尊重し、多様な考え方を受け入れることができるため、子どもたちの探求心や創造性を育む土壌となります。
さらに、教員が自身の専門性を高める時間が増えることで、授業の質が向上し、子どもたちはより深く学び、主体的に課題を解決する力を育むことができるようになります。
急速に変化する現代社会において、子どもたちにはこれからの時代を力強く生き抜くための力が求められています。それは、「正解」を覚える力だけでなく、自ら問いを立て、多様な情報の中から必要なものを選び取り、協働しながら解決策を見つけ出す力です。
教員の働き方改革は、単に教員の残業時間を減らすことだけが目的ではありません。教員が生き生きと働き、授業の質を高めることで、子どもたちがこれらの力を育むための質の高い学びの場を提供することを目指しています。
教員自身も、働き方改革を「他人事」とせず、主体的に取り組む必要があります。
● 業務の優先順位付けと効率的な遂行: 限られた時間の中で、子どもたちにとって本当に必要な業務は何かを見極め、効率的に取り組む意識を高めます。
● ICTスキルの向上: 日々進化するICTを積極的に活用し、業務の効率化を図ります。
● チームとしての協働: 互いに協力し、情報を共有することで、学校全体の生産性を高めます。
● 心身の健康管理: 自身の健康に留意し、適切な休息を取ることを心がけます。
教員の働き方改革は、学校だけの力で実現できるものではありません。保護者の皆様のご理解とご協力が不可欠です。
● 学校への連絡方法と時間へのご配慮: 学校へのご連絡は、原則としてさくら連絡網の活用にご協力をお願いいたします。また、学校への電話でのご連絡につきましては、後日、奈良市教育委員会よりお知らせする時間にご連絡いただけますよう、ご配慮をお願いいたします。
● 学校行事やPTA活動へのご理解とご協力: 日頃より、本校の教育活動や学校行事にご理解ご協力いただき、心より感謝申し上げます。今後も、学校教育の充実のため、無理のない範囲で、児童の登下校の安全見守りなど、学校の教育活動にご協力いただけますと幸いです。
● 教員への温かいお声がけ: いつも本校の教育活動や教員に対し、温かいお声かけをいただき、誠にありがとうございます。皆様からの肯定的なお言葉が、教員が日々の教育活動に励む上での精神的な支えとなっております。保護者の皆様と学校が同じ方向で教育にあたることが、児童の健全な成長に繋がると考えております。今後も、保護者の皆様と学校がより一層良好な関係を築き、連携を深めていきたいと願っております。
● 保護者と学校の連携強化: 学校と家庭が連携し、子どもたちの健やかな成長を共に支えていくために、学校の取り組みにご理解とご協力をお願いいたします。今後も児童にとってより良い教育環境を整えるために努めてまいります。皆様のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げます。
本校では、奈良市教育委員会に対しても、教員の働き方改革がより一層推進されるよう、以下の点を要望してまいります。
● 教員定数の適正化と増員: きめ細やかな指導体制を確立するためには、教員の数を増やすことが不可欠です。
● 学校における専門スタッフの配置拡充: スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、部活動指導員、ICT支援員など、専門的な知識を持った人材の配置を増やし、教員の負担軽減と子どもたちへの多様な支援体制を強化していただきたいです。
● 予算の確保と環境整備: ICT機器の整備や校舎の老朽化対策など、環境を整備するための予算確保をお願いいたします。
結びに、私たちは、子どもたちが未来を切り拓く力を育むために、教員一人ひとりが教育への情熱を持ち続け、活き活きと働ける学校環境を整えることが最も重要だと考えています。保護者の皆様と手を取り合い、共に子どもたちの成長を支えていけるよう、何卒ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
令和7年12月吉日
奈良市立富雄南小学校
校長 佐々木康友